日本安全運転医療学会

日本安全運転・医療研究会設立の経緯

社会的背景

 我が国では1990年代より患者の自動車運転や運転再開が臨床的にも重要な問題となってきました.研究会活動としては2008年に「運転と認知機能研究会」「障害者自動車運転研究会」が活動を開始し,2013年に「自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究会」が開催されました。
 一方,高齢化社会の到来により自動車を運転する高齢者が多くなり,1997年には高齢運転者標識設置の規定が定められ,さらに認知症やてんかん患者が引き起こした自動車運転事故が社会問題となりました。記憶に新しいものでは,2011年4月に鹿沼市でてんかん患者のクレーン車事故,2012年4月に京都市でてんかん患者の暴走事故,2015年10月には宮崎市で認知症とてんかんの既往がある高齢者の事故がありました。高齢者や患者の自動車運転は単に医療の問題ではなく,重大な社会的問題となってきました。

研究会活動の範囲

 研究会で取り扱う対象者は,高齢健常者,軽度認知障害,認知症,外傷性脳損傷,脳卒中,てんかん,およびその他の疾患患者と幅広く,診療科として精神科,神経内科,脳神経外科,リハ科,老年内科など多彩であり,多くの臨床科が学際的に取り組む必要があります.
 研究テーマも,自動車運転に関与する認知機能および身体機能,自動車運転に関する医学的判断やリハビリテーション,自動車教習所における患者や障害者への実車教習や指導,医療・自動車教習所・公安委員会との連携,高齢者や障害者への移動手段確保,補助装置や支援装置の開発,社会として交通の安全確保など,範囲は極めて広いのが特徴です。
 そのため研究会を構成する専門職として,医療系では医師,看護師,作業療法士,理学療法士,言語聴覚士,臨床心理士,医療ソーシャルワーカー,福祉系では社会福祉士,生活指導員,その他の福祉関係者,自動車教習所指導員,警察や公安委員会(交通安全に関与する機関・団体等を含む)の関係者,医療福祉および運輸・建設関係の行政担当者,自動車や補助・支援装置を開発・製造する工学者や企業担当者,都市計画や生活支援体制を専門とする研究者などの参加が必須です。

より多くの英知を集める!

 患者・障害者や高齢者の自動車運転のテーマは,広範な領域に跨がり多彩な専門職の参加が必須であり,研究会の研究成果や作成した提言は社会的責任が極めて大きくなります.これらの状況を熟考すると,少人数で限定された集団の研究会ではなく,全国規模で多数の関係者が参加する研究会や学会へと発展させ,より多くの英知を集めて自動車運転に関する諸問題に取り組み,標準的な見解を提示し,当事者や社会のニーズに応えて行くことが重要です。

研究会の合同と統合

 2015年9月,慶応義塾大学医学部臨床研究棟会議室にて3研究会代表者ら(運転と認知機能研究会:三村将,藤田佳男,障害者自動車運転研究会:武原格,渡邊修,一杉正仁,大場秀樹,自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究会(代表:蜂須賀研二,2016年4月より佐伯覚)が合同会議を開催し,将来構想に関して協議し,以下の基本方針を定めました。

  1. 第一段階として研究会を合同で開催し,第二段階として研究会を統合し,第三段階として学会化の利点と欠点を検討し利点が大きければ学会へと組織改変を行う。
  2. 2016年度は会長を蜂須賀,2017年度は一杉,2018年度は三村が担当する。
  3. 研究会開催のために開催事務局を各会長の下に年度毎に置くが,3年間を通した研究会の運営事務局は産業医科大学リハビリテーション医学講座(担当:加藤,佐伯)に設置する。
  4. 2016年度に合同で開催する研究会は「自動車運転に関する合同研究会」と称し,母体となる以下の3研究会名を併記。
    • 「運転と認知機能研究会(代表:三村将)」
    • 「障害者自動車運転研究会(代表:武原格)」
    • 「自動車運転再開とリハに関する研究会(代表:佐伯覚)」
    • 運転と認知機能研究会
    • 障害者自動車運転研究会
    • 自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究会
  5. 合同研究会幹事を定め,合同研究会世話人は各研究会からの推薦をもとに選任する。

第1回自動車運転に関する合同研究会の開催

2017.1.21(土)に北九州国際会議場にて「第1回自動車運転に関する合同研究会」が開催されました。特別講演やシンポジウム、専門講習会に加え一般口演やポスター展示も行われ、800人を超える医療やリハビリテーション,工学,自動車企業,自動車教習所,公安委員会などの関係者が全国よりお集まりいただき大変盛況な研究会となりました。
また幹事、世話人会にて研究会の統合が承認され「日本安全運転・医療研究会」が設立されました。

文責:日本安全運転医療学会 更新日:2017年10月3日

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