日本安全運転・医療研究会

障害者自動車運転研究会

研究会発足の背景と経過

我々は、障害者が退院後の日常生活や職場への復職に際し、自動車運転を必要とするものの、具体的な基準や手順が整備されていないため困惑していた。各種の中枢神経障害のうち、脳卒中による片麻痺は頻度が多く、なかでも高次脳機能障害は自動車運転再開に大きな問題となる。自動車の運転可否については、法律に則って公安委員会が最終的に決定する。しかし、事実上は自動車の安全な運転に必要な認知、判断、行動能力を備えているかの判断が医療従事者にゆだねられる。むしろ、医療従事者と患者との信頼関係の中で、自動車運転について適切な助言を行うことや、自動車運転に特化した療養指導を行うことも求められる。医療サイドが運転を禁止することは容易であるが、その後医療関係者側に相談せずに運転を再開する場合も少なくない。心身機能の正しい評価のもとに運転再開の可能性を判断し、障害者の安全な自動車運転を継続的に支援することはわれわれの重要な使命であると考えた。

そこで2008年(平成20年)に障害者自動車運転研究会が東京都リハビリテーション病院を拠点として発足した。医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が中心となり活動を行ってきた。臨床、研究、啓発の3本柱で活動を行っており、年に1回「障害者自動車運転研究会」を開催し、7回を数えるようになった。各回約200名の参加者に対し、研究発表会、シンポジウム、特別講演等を行ってきた。

2011年(平成23年)4月18日栃木県鹿沼市において、クレーン車の暴走によって多数の学童に死者がでたという痛ましい事件が発生した。そのことをきっかけに道路交通法が改正となった。しかし、その後も運転中の様々な病気発症のニュースは絶えることがない。

身体機能障害、高次脳機能障害、その他医学的管理を要する疾患など病態が各人異なるため、運転再開を検討するための判断基準は曖昧なため医療現場で混乱を生じている。そのため、われわれは、組織を大きくして国に対して医療現場の声を届ける必要があると考えた。我々同様に疾患や障害と自動車運転に関して研究会を行っている「運転と認知機能研究会」と「自動車運転再開とリハビリテーション研究会」がひとつになり、大きな組織を作るべきと考えた。

第6回障害者自動車運転研究会では、「運転と認知機能研究会」から三村將先生を招き、「自動車運転再開とリハビリテーション研究会」から加藤徳明先生を招き、合同研究会の提案を行い各研究会の了承を得て、2016年春より合同研究会が発足となった。

研究会組織

顧問原宿リハビリテーション病院名誉院長 林泰史
  (前東京都リハビリテーション病院院長)
会長化学療法研究所附属病院リハビリテーション科部長 武原 格
副会長東京慈恵会医科大学第三病院リハビリテーション科教授 渡邉 修
会計滋賀医科大学社会医学講座法医学部門教授 一杉正仁
幹事東京都リハビリテーション病院副院長 柳原幸治
東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科医長 牛場直子
慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター 馬塲美年子
東京都リハビリテーション病院理学療法士 平野正仁
東京都リハビリテーション病院作業療法士 大場 秀樹
東京都リハビリテーション病院作業療法士 山嵜未音
東京都リハビリテーション病院作業療法士 福田祐子
東京都リハビリテーション病院作業療法士 藤田庸子
東京都リハビリテーション病院言語聴覚士 井上裕之
東京都リハビリテーション病院理学療法士 浅見美恵子
東京都リハビリテーション病院作業療法士 高井真希子
東京都リハビリテーション病院作業療法士 齋藤正洋
東京都リハビリテーション病院作業療法士 松尾温子
東京都リハビリテーション病院作業療法士 渡邊志保美
東京都リハビリテーション病院理学療法士 廣澤全紀
東京都リハビリテーション病院理学療法士 山本純一郎

研究会事業

第1回研究会 2009年11月7日(土) 16:00〜18:00 上野ホテルパークサイド2階「不忍の間」

1.一般講演
座長:首都大学東京大学院人間健康科学研究科 教授 渡邉 修
1)「脳卒中患者の自動車運転再開支援について」
  東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科医長 武原 格
2)「自動車運転中の病気発症について」 
  獨協医科大学法医学講座 准教授 一杉正仁
2.特別講演
座長:東京都リハビリテーション病院院長 林 泰史
「なぜ起きる、どう防ぐ運転中の意識消失」
 埼玉医科大学 神経内科・脳卒中内科 教授 荒木信夫

第2回研究会 2011年1月20日(木) 19:00〜20:40 江戸東京博物館

1.一般講演
「自動車運転再開の流れと当院の取り組み」
東京都リハビリテーション病院作業療法士 山嵜未音
2.特別講演
 「自動車運転と高次脳機能」
 首都大学東京大学院人間健康科学研究科 教授 渡邉 修

第3回研究会 2012年1月17日(火) 19:00〜20:40 江戸東京博物館

1.一般講演
「簡易ドライビングシミュレーターを用いた駐車能力評価」
東京都リハビリテーション病院理学療法士 平野正仁
2.特別講演
 「脳の仕組みから見たリハビリテーション―自動車運転をどう考えるか―」
 国保松戸市立病院総長 植村研一

第4回研究会 2013年1月13日(日) 13:00〜16:30 東京慈恵会医科大学大学1号館 3階講堂

1.特別講演
 座長:東京都リハビリテーション病院院長 林 泰史
1)「自動車運転における予防安全装置の現状」
  独立行政法人 交通安全環境研究所主任研究員 廣瀬敏也
2)「予防安全装置による歩行者の被害軽減効果」
  独立行政法人 交通安全環境研究所主席研究員 松井靖浩
2.シンポジウム
 座長:首都大学東京大学院人間健康科学研究科 教授 渡邉 修
    東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科医長 武原 格
 「健康管理と自動車運転」
  獨協医科大学法医学講座准教授 一杉正仁
 「当院の運転評価の取り組みと家族教室の実際」
 東京都リハビリテーション病院作業療法士 山嵜未音
「当センターにおける高次脳機能障害者への運転再開評価・支援の取り組み」
 千葉県千葉リハビリテーションセンター 成人作業療法科 小倉由紀
「当センターでの運転評価の取り組みと高次脳機能障害者の自動車運転における行動
 特徴と機能特性」
名古屋市総合リハビリテーションセンター 作業療法科 田中 創

第5回研究会 2013年12月1日(日) 13:00〜16:30 東京慈恵会医科大学大学1号館 3階講堂

1.特別講演
 座長:獨協医科大学法医学講座准教授 一杉正仁
「道路交通法改正について:疾病や障害をもつ人と自動車運転」
  警察庁交通局運転免許課 宮島克益
2.シンポジウム
 座長:東京慈恵会医科大学第三病院リハビリテーション科教授 渡邉 修
    東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科医長 武原 格
 「急性期病院での自動車運転評価の取り組み」
  聖隷三方原病院リハビリテーション科 鈴木麻美
 「運転再開評価にてチームで判断に難渋した事例および長期フォローアップ調査」
 東京都リハビリテーション病院理学療法士 浅見美恵子
「運転再開における運転補助装置の役割など」
 有限会社フジオート 杉山光一
「脳損傷者の運転再開について」
国立障害者リハビリテーションセンター 自立訓練部機能訓練課自動車運転室長
熊倉良雄

第6回研究会 2015年1月25日(日) 10:00〜16:30 東京慈恵会医科大学大学1号館 3階講堂

一般演題
座長:東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科医長 牛場直子
   目白大学保健医療学部作業療法学科准教授 藤田佳男
1)「USN軽症例の自動車運転支援における注意点―複数症例を経験し見えてきたことー」
  新潟医療福祉大学医療技術学部作業療法学科 外川 佑
2)「福祉機関で行う自動車運転再開プログラムの現状―障がい者自動車運転再開リハビリ
テーションの課題に対する解決策―」
  聖隷クリストファー大学,NPA法人えんしゅう生活支援net 建木 健
3)「病初期に半側空間無視を呈した症例への運転支援経験」
  井野辺病院総合リハビリテーションセンター 加藤貴志
4)「脳損傷者の自動車運転再開に向けた神経心理学的検査・シミュレータ評価・実車評価の関連性について」
別府リハビリテーションセンター 浅野なるみ
5)「高次脳機能障害者の自動車運転再開に向けた当院での取り組み」
  浜松市リハビリテーション病院 水谷友子
6)「二種免許制度と職業運転手への介入報告」
  東京都リハビリテーション病院 平野正仁
基調講演
座長:昭和大学医学部リハビリテーション医学講座教授 水間正澄
「認知障害と自動車運転」
 慶応義塾大学精神・神経科学教室教授 三村將
シンポジウム
座長:東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座教授 渡邉 修
   東京都リハビリテーション病院副院長        柳原幸治
「日本自動車連盟における安全運転教育の現状について」
JAF交通環境部事業推進課 近藤博嗣
「自動車運転を念頭に置いた医学的管理」
 滋賀医科大学社会医学講座法医学部門教授 一杉正仁
「脳卒中患者の自動車運転再開に必要な能力」
 化学療法研究所附属病院リハビリテーション科部長 武原 格
「高次脳機能障害者の自動車運転再開に関する評価」
 産業医科大学リハビリテーション医学講座 加藤徳明 「自動車運転者に求められる法的責任について」  慶応義塾大学医学部総合医科学研究センター 馬塲美年子

第7回研究会 2016年1月25日(日) 10:00〜16:20 東京慈恵会医科大学中央講堂

座長:東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科医長 牛場直子
   東京慈恵会医科大学附属病院作業療法士 田中智子
一般演題
1)「院内評価と実車運転評価において違いのあった一症例」
  新潟リハビリテーション病院 村山拓也
2)「前脳基底部健忘と注意障害を呈するも運転再開と職場復帰を果たしたクモ膜下出血の一例」
  新潟リハビリテーション病院 佐藤卓也
3)「脳血管障害後遺症患者の自動車運転再開評価について―神経心理学的検査結果が境界型患者の運転再開について―」
  佐野厚生総合病院 生井宏満
4)「当院退院後、近医で運転再開となった脳卒中患者の諸問題」
化学療法研究所附属病院 竹内真季
5)「タクシー運転手の復職―脳損傷患者での経験―」
  東京都リハビリテーション病院 大場秀樹
6)「自動車学校との連携による包括的かつ継続的な支援により運転再開に至った事例」
  浜松市リハビリテーション病院 岡村千紗子
教育講演
座長:東京都リハビリテーション病院副院長 柳原幸治
「自動車運転再開にむけた知識の確認」
「療養指導に必要な法的知識」
 滋賀医科大学社会医学講座法医学部門 一杉正仁
「運転再開の流れと運動機能」
 化学療法研究所附属病院リハビリテーション科 武原 格
「運転再開のための高次脳機能」
 東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座 渡邊修
「当院での運転再開への実際」
 東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科 牛場直子
シンポジウム
座長:化学療法研究所附属病院リハビリテーション科 武原 格
   東京都リハビリテーション病院作業療法士   藤田庸子
「自動車運転再開にむけた地域の取り組み―沖縄県の場合―」
沖縄リハビリテーション病院 栗原 環
「高次脳機能障害者の自動車運転再開に向けた地域の取り組み」
聖隷浜松病院 西村 立
「脳損傷者の自動車運転再開支援―坂総合病院・泉病院での取り組み―」
 泉病院 佐々木 類
「自動車運転再開に向けた地域の取り組み」
 東京都リハビリテーション病院 山嵜未音

出版事業の内容
  • 林 泰史,米本恭三(監修)、武原格,一杉正仁,渡邊修(編集):脳卒中・脳外傷者のための自動車運転.三輪書店, 東京, 2013
受賞
  • 第44回日本作業療法学会学会長賞 山嵜未音 中村祐子 武原 格

文責:日本安全運転・医療研究会 更新日:2017年10月3日

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