脳卒中後に左半側空間無視を呈した症例に対する自動車運転再開支援経験
著者名
加藤貴志*,川田雅与**,山崎理絵*,久保田直文*,井野辺純一***
所属
*医療法人畏敬会 井野辺病院 総合リハビリテーションセンター リハビリテーション部
**社会医療法人敬和会 大分豊寿苑 リハビリテーション課
***医療法人畏敬会 井野辺病院 総合リハビリテーションセンター
キーワード
脳卒中(stroke), 運転(driving), 左半側空間無視(left unilateral spatial neglect)
抄録
左半側空間無視(以下USN)はリハビリテーションの予後不良因子であり,運転技能にも影響が生じる.今回,急性期にUSNを呈した脳卒中症例に対する運転再開支援を経験した.症例は60代,男性の右脳梗塞症例.発症日当日,運転中に左側下方の車載時計の位置が分からなくなる症状を自覚し,当院受診.回復期病棟入院を経て外来にて運転再開支援を実施.回復期期間中にBIT行動性無視検査通常検査129点から143点となる等,USNの改善がみられていた.このため自動車学校にて実車評価を実施.後方駐車の際,警笛棒に接触する場面がみられたが練習により改善.その他の運転技能にも著明な問題はみられなかった. 評価後に臨時適正相談を受検し合格.運転再開から5年間事故なく運転継続できている.USNの運転再開支援にあたっては左側の無視に加え,前後上下を含む3次元空間での無視症状などUSN特有の症状にも注意する必要があると考えられる.